2024.03.07
概要
美容クリニックで永久脱毛している人は増えてきており、女性だけでなく男性の方でも興味がある方は増えてきています。
脱毛CMもよく見かけるようになりましたが、
「医療脱毛」「エステ脱毛」「自宅で行うセルフ脱毛」
など脱毛する方法も様々あります。
また、どの方法が効果的でコスパ・タイパが良いのか、違いが分からないという声をよく聞きます。
患者様に治療内容や計画を伝えるのと同様に、脱毛に関しても基本的なことを理解して、脱毛のことを簡単に学んでみませんか?
この記事では、医療脱毛についてご紹介いたします。
<目次>
1,毛のしくみ
1-1.毛の解剖生理
1-2.どうやって生え変わる?
1-3.犯人は毛球部かバルジ領域か
2,脱毛成功のポイントは?
2-1.毛周期
2-2.皮毛角
2-3.レーザーの種類
3,脱毛の作用機序
3-1.熱破壊式
3-2.蓄熱式
3-3.熱破壊式か蓄熱式か
4,副作用・禁忌
4-1.火傷(日焼けはだめ)
4-2.硬毛化
5,まとめ
1. 毛のしくみ
身体の毛は、人間の進化の過程で薄くなってきましたが、今でも体温調節や皮膚の保護といった役割があります。
しかし、時代の流れの中でムダなもの、要らないものとして処理されるようになりました。
「体の毛は無くても大丈夫?」と思う方もおられるかもしれませんが、毛が無くても身体へ大きな変化が起こることは少ないです。
脱毛方法については、医療機関でレーザー脱毛、剃刀でセルフケア、美容家電でホームケア、ブラジリアンワックス脱毛など様々な方法があります。
脱毛に関する基本的知識として、まずは毛が生え変わる仕組みを押さえましょう。
1-1.毛の解剖生理
毛は皮膚の付属器の一つです。
皮膚は体外から
表皮、真皮、皮下組織(脂肪層)
と続き、毛は表皮が変化したもので、真皮層にあります。
体表に出ている部分を毛幹、体内の部分を毛根といい、毛根の先(体内側)は球形をしていることから毛球部と呼ばれます。
この毛球部には毛乳頭と毛母細胞があります。
この毛球部は脂肪層にやや食い込むように存在している場合もあり、皮膚の中で毛は毛包という袋に包まれ、脂腺が付属しています。
毛包には立毛筋(起毛筋ともいう、鳥肌の原因になる筋肉)が付着しており、少し膨隆しています。
その膨隆部をバルジ領域といい、毛母細胞、幹細胞が存在します。
簡単ではありますが、ひとまず脱毛を理解するのに、必要な知識となります。
1-2.どうやって生え変わる?
毛乳頭には毛の成長促進因子を作り、毛のサイクルを管理する役割があります。
毛の発生・成長は毛乳頭の指令によって起こります。
毛母細胞に指令し栄養を渡すと、それを基に毛母細胞が細胞分裂を繰り返します。
細胞分裂により生まれた細胞は、その後分裂して生まれてくる細胞によって、上に上にと押し上げられ、毛になります。
脱毛も、毛乳頭の指令によって起こります。
指令が出ると毛母細胞は細胞分裂を止め、休止状態に入ります。
毛乳頭が縮小し、指令が出なくなると、さらに毛は退行し、抜けてしまいます。
1-3.犯人は毛球部かバルジ領域か
毛の生え変わるしくみに関しては、長い間そのように考えられていました。
ところが2000年頃に、毛が生え変わる原因は、毛球部ではなくバルジ領域であるという発表がされました。
バルジ領域には前述の通り、毛母細胞と幹細胞があります。
『毛母細胞があるため、細胞分裂を行っているのでは?』
と毛球部を切断した状態の毛を移植したところ、毛が生えてきたとのことです。
しかし、
『それだけでは毛の再生は毛球部ではなく、バルジ領域が原因であると断定できない』
と現在でも諸説ある状況です。
そのため、永久脱毛を成功させるには、毛母細胞とバルジ領域がポイントになってきます。
2. 脱毛成功のポイントは?
「永久脱毛したのに2~3年経ったら生えてきた」
「施術回数を勧められた回数のセットを組んだのに、その回数で終わらなかった」
という話を聞いたことがあると思います。
思った通りに脱毛がうまくいく場合とそうではない場合、何が違うのでしょうか?
2-1.毛周期
毛が生え変わる仕組みは前述の通りで、そのサイクル(周期)を毛周期といいます。
毛周期は以下の内容です。
- 成長期 毛乳頭細胞の指令のもと栄養を取り込み、細胞分裂を盛んに行い毛が伸びる時期
- 退行期 毛乳頭が縮小し、細胞分裂が抑制され毛が退行し始める時期
- 休止期 細胞分裂が止まり、毛の成長が停止する時期
今、生えている毛はいつか抜けますが、その頃には今、休止期になっている毛がやがて生えてきます。
つまり、たくさん毛が生えているように見えたとしても、実際には存在している毛の一部しか生えていないことになります。
生えると抜けるを繰り返していることで、常に毛が生えている状態を保てるようになっています。
脱毛が、一回の施術で終わることができないのは、このためです。
毛周期は体の部位によっても変わりますし、また毛によっても、同一部位のすべての毛が同じ周期ではありません。
この毛周期にうまく合わせないと、効率的に脱毛することができないのです。
2-2.皮毛角
皮膚と毛の間の角度を皮毛角といいます。
毛球部は基本的に真皮層にありますが、毛球部の位置も毛周期同様に一定ではありません。
体の部位によっても違いますし、同一部位でも揃っていないことがあります。
また、個人差もあります。
皮毛角が小さい毛(肌に沿うように寝ているように生えている毛)は、体外から見て浅い層に毛球部があり、逆に皮毛角が大きい毛(立つように生えている毛)は、深い層に毛球部があると考えられています。
毛球部を破壊しようと思うと、深い層にある方がレーザーが届きにくくなるため、皮毛角の大きい毛は、皮毛角の小さい毛に比べると治療が難しくなります。
2-3.レーザーの種類
脱毛レーザにはアレキサンドライトレーザーやダイオードレーザーなど種類がありますので、それぞれの特徴をご説明します。
アレキサンドライトレーザー(波長の長さ:755nm)
- 波長が短く、黒い(メラニン)毛に強く反応する
- 痛みはダイオードよりは強く、ヤグレーザーよりは弱い(よく輪ゴムで弾いた痛さと表現される)
- ポップアップという毛が弾けるような反応をすることがあり、抜けるのもわかりやすい
ダイオードレーザー(波長の長さ:800〜810nm、940nm)
- 波長は中間的で、幅広い肌色・毛質に効果がある(メラニンに反応するので、あくまで日焼けは要注意)
- 痛みが最も弱く、産毛にも反応する
- 抜けるのが分かりにくく、気付けば生えてこないと認識するような脱毛の仕方
Nd:YAG(ヤグ)レーザー(波長の長さ:1064nm)
- 波長が長いため、深い層に照射できる
- 痛みは一番強いが、脱毛効果も一番高い
- 抜け方はアレキサンドライトレーザーと同様
皮膚に照射すると、反射や屈折の関係上、その数値の深さまでレーザーが届くわけではありませんが、そこまで難しく考える必要はないでしょう。
ポイントとして、皮毛角の大きさや施術回数、痛みの強さなどでレーザーを選ぶと良いです。
また、アレキサンドライトレーザー、ヤグレーザーは熱破壊式脱毛器、ダイオードレーザーは蓄熱式脱毛器で主に使用されています。
3. 脱毛の作用機序
毛が生え変わる原因は、毛球部かバルジ領域かその両方です。
毛周期や皮毛角に合わせてレーザーを選ぶとして、熱破壊式が良いのか、蓄熱式が良いのかどちらを選べばよいでしょうか。
熱破壊式と蓄熱式の違いは以下となります。
- 破壊するターゲットが違う
- 組織への熱の加え方が違う
- 毛の抜け方が違う
3-1.熱破壊式脱毛器
熱破壊式は従来から主に行われている方法で、毛根(毛球部)をターゲットにしてレーザーを照射します。
メラニンに反応するため、周囲の組織にも多少のレーザーが吸収されることから痛みが生じ、火傷のリスクもありますが、毛が一番強く反応するため高い効果があります。
疼痛と効果の点からアレキサンドライトレーザーが広く用いられ、男性のひげ等そもそも深い層に照射しなければならない場合や、アレキサンドライトレーザーで残ってしまった毛の対応などをヤグレーザーで行うことが多いです。
ヤグレーザーは硬毛化のリスクが低く、最初から最後までヤグレーザーを使用する場合もあります。
3-2.蓄熱式脱毛器
蓄熱式はバルジ領域をターゲットにしています。
メラニンに反応するものの、バルジ領域全体を破壊するため、真皮層に熱を徐々に加え温めて、蒸し焼きにするようなイメージでターゲットを破壊します。
痛みはぴりぴりするような、軽度の痛みがあります。
毛が抜けるところは非常にわかり辛いですが、効果はきちんとあります。
3-3.熱破壊式か蓄熱式か
毛球部にもバルジ領域にも毛母細胞があり、どちらを破壊すれば良いのか分からないのに、熱破壊式か蓄熱式かと言われても選ぶのが難しいと思います。
しかも熱破壊式も蓄熱式も効果があり、たくさんの医師や患者様から支持されているとすると、ますます混乱します。
熱破壊式で施術した場合
メラニンに強く反応するため、毛球部だけでなく毛の他の部分も反応します。
バルジ領域は、毛そのものというより膨隆部ですが、膨隆部は毛球部よりも浅い位置にあるため、毛球部が破壊されるくらい熱がしっかり加われば、自然とバルジ領域にも熱が加わります。
しかも毛球部よりバルジ領域の方が低温で破壊されます。
毛球部を破壊するつもりで照射したレーザーが、バルジ領域にも破壊し得るダメージを与えることになります。
蓄熱式で施術した場合
バルジをターゲットにしていますが、熱破壊式が点でレーザーを照射するのに対し、面で照射して熱をこもらせます。
確実に永久脱毛するために、バルジ領域の破壊に必要な温度よりも、高めの温度になるよう熱をこもらせます。
その高めの温度は、毛球部を破壊し得る温度です。
結果として蓄熱式はバルジ領域だけでなく、毛球部にもしっかりダメージを与えることになります。
つまり、熱破壊式・蓄熱式ともに毛球部とバルジ領域の両方を破壊しています。
そのために現在どちらの方法でも、高い脱毛効果があげられると考えられています。
4. 副作用・禁忌
きちんとした知識と技術があれば、脱毛はそんなに難しい施術ではありません。
副作用や禁忌もいくつかありますが、まず知っておきたい火傷と硬毛化をお伝えします。
4-1.火傷
脱毛で起こる火傷は『表皮焼け』と呼ばれることもあり、時間の経過とともに治ります。
ですが、そのような事態にならないよう予防策は必要です。
脱毛は、熱破壊式でも蓄熱式でも熱でターゲットを破壊します。
レーザー照射することで、周囲の組織も反応し熱が発生しますし、ターゲットからの放射熱でさらに温度が上がりますので、火傷のリスクは常にあります。
日焼けしていると、一見落ち着いているように見えても、体内に熱がこもっている場合があります。
その状態にレーザーを照射し、さらに熱を加えると、ますます火傷のリスクをあげてしまいます。
ですので、日焼け後のレーザー照射は禁忌だと思うくらいが良いです。
また、熱破壊式の場合はメラニンに強く反応するため、もともと皮膚の色が濃い人も火傷のリスクが上がります。
一方、蓄熱式には幅広い設定値がされているものもあるなど、生来の皮膚の色に関係なく施術可能です。
4-2.硬毛化
脱毛することで、毛が太く濃くなることがあります。
その現象を硬毛化といい、研究も進んでいますが、原因と解決策がまだ確立されていません。
顔など硬毛化になりやすい部位は分かってきていますし、回数がかかる場合はあるものの、ヤグレーザーを照射すれば対応できること分かってきています。
レーザー脱毛の施術を行う場合には、硬毛化のリスクやなってしまった場合の対応などを、確認しておくと良いです。
5. まとめ
今回の脱毛に関する記事を、脱毛の知識としてご参考にして頂ければと思います。
「かんごりすた」では、美容クリニックでの勤務経験のある看護師も在籍しておりますので、美容クリニックで働く上でのアドバスやもっと脱毛について知りたい方、良い転職にするためのサポートを行っています。
美容クリニックへ転職をお考えの方は、ぜひ「かんごりすた」へご相談下さい。
どのような疑問・お悩みでも大丈夫です。少しでも気になったら、ぜひお気軽にお尋ねください。
みなさまの転職が素敵なものとなるようお手伝いさせて頂けること、スタッフ一同心よりお待ちしております。